前回の記事で採点講評には受験者に伝えたいメッセージが凝縮されているということをお伝えした。
そして、その中でも最も重要視すべきことは「問題文の趣旨に沿うこと」ということをお伝えした。
今回は、問題文の趣旨に沿ったうえで「具体的に論述する」ということに焦点を当てたいと思う。
採点官が求めている論文はあなたの具体的な経験や考えである!
論述試験では表面的な解答は求めてないという講評があったのぉ~
一般論や表面的な解答では残念ながらA評価にはなりません。
まずは前回の振り返りを少ししてみたいと思う。
採点講評では「問題文の趣旨に沿わないこと」や「表面的で具体性の乏しい」ものは評価を下げると記載されている。
では、「表面的な」や「具体性の乏しい」論文とはどのようなものなのかを深堀してみようと思う。
令和5年度秋期エンベデッドシステムスペシャリスト試験の午後Ⅱ試験の問題を見てみよう。
問題文を読むと、異業種の新規参入や半導体電子部品不足による調達リスクなどの外的要因の脅威について書かれている。
これらを内容を論述する際に、一般論だと以下のようなポイントになる。
- 別業種で事業を営んでいた企業が新規事業として組込みシステムの新製品を市場投入してくる
- 半導体電子部品が調達できず、新製品の開発に影響が出て市場投入できないリスクがある
- 新規参入企業に負けず、半導体電子部品が調達できるように対策を練る
上記の内容は決して間違っていない。
だが、問題文の最後には「あなたの経験と考えに基づいて」という記載があることに注意しよう。
結果的には上記のように一般論があなたの論述内容と合致することも当然ある。
しかし、あなたの論述内容が具体的で客観性のある内容になっていないといけない。
論述試験でA評価を得るためには、採点官にあなたの論文を納得させる必要がある。
そのためには、さらに以下のような要素を追加していく必要がある。
- あなたが企画している新製品について新規参入してくる可能性のある企業はどのような企業?
- その企業が参入するとあなたの新製品企画にどのような影響を与えるの?
- あなたの論述する企業の強みが強固なものであれば参入障壁になるはずのに、なぜ対策を打つ必要があるの?
- 半導体電子部品の調達ができないとは具体的にどれぐらいの量を指しているの?
→従来通りの量でOK?
→既存製品を残しつつの新製品開発となるため従来よりもより多くの材料が必要になる? - 論述対象の製品企画において、なぜ半導体電子部品の調達ができないことがなぜ脅威になるの?
問題文を転写して一般論で膨らませても採点官は「あなたの経験や考えに基づいて」いない論文であるため、評価を下げるしかないのだ。
そうではなく、まずはより具体的な状況を採点官に伝え、そのうえでこの状況だったから○○企業が新規参入するとやっかいだ、電子部品の調達が計画通りに行えないと市場投入しても勝てないといったことを論述しなければならないという点に注意しよう。
設問アはあなたの状況を具体的に伝えること!
状況を伝えることが重要とのことじゃがどこに書くのかのぉ~
状況を書き上げる場所は設問アです
受験者が論述する内容のうち、状況を伝える箇所は設問アである。
まずは、問題文を改めてみてみよう。
設問アを見てもらうとよくわかると思うが、新製品の概要や企画に至った経緯、ファイブフォース分析によって抽出した脅威のうち三つを論述するように求められている。
問題文の趣旨に沿うためには、問題文にあるDXやIoTに関する新製品であることや問題文中段にあるファイブフォース分析の脅威例を軸にして、あなたの経験や考えを基に状況を伝えることが重要である。
設問アは、設問イやウの内容の妥当性を評価するための重要な内容になることを忘れてはならない。
つまり、設問アはただ状況をより詳細に書けばよいというものではなく、設問アの内容(状況)があるから設問イやウで論述する考えや対策になったなど、設問イやウの前提条件として論述する必要がある。
設問イとウはあなたの状況を踏まえて具体的にどうしたのかを伝えること!
問題文の趣旨に沿いながら具体的に書くとは難しいのぉ~
論述試験においてここが最も難しい所だと思います
次に、設問イやウで問われていることを見てみよう。
設問アで論述した三つの脅威から二つに絞ったうえで、それぞれの脅威に対する分析を行い、分析結果を基に関連部門を巻き込みながらどのように対策を行ったかが問われている。
さらに、その対策を講ずる上での課題にはどのようなものがあり、それを関連部門とどのように調整して解決したかが求められている。
設問ウでは、設問イの対策を踏まえて、分析結果や対策案の評価、関連部門と調整しながら課題解決した評価が求められている。
つまり、脅威の分析→対策→対策を講じるうえでの課題→課題解決→評価を一気に書き上げる箇所である。
ここでも問題文の趣旨に沿うために、問題文の内容を活用する必要がある。
問題文では既存業者間の競争や売り手の交渉力を例示しているため、設問アで記載する三つの脅威もこれらを含ませておいた方が良い。
そうすれば、設問イで設問アで記載して三つの脅威のうち、既存業者間の競争と売り手の交渉力を記載すれば問題文とも合うため、問題の趣旨から外れるリスクが低下する。
その際に、問題文の転写または問題文を肉付けしてふくらました内容で論述すると表面的な内容と判断される可能性が高くなることに注意しよう。
よって設問アで論述した状況を前提に、あなたの新製品の脅威として既存業者間の競争や売り手の交渉力が挙げられる理由を述べた上で、分析から評価までを具体的に書き上げる必要がある。
また、定性的な内容ばかりだと客観的な評価ができない場合があるため、可能であれば数字も使おう。
例えば、売り手の交渉力として価格の値上げ交渉があった場合を考えてみよう。
従来は部品1個あたり100円だったのに対し、当該部品の需要が増加したことで提示価格が1個あたり150円と強気に出てきた。
その回答結果を受け、発注部門など社内の関係部門と作戦を練ったうえで、値上げ交渉を飲む代わりに現状よりも発注量を1.5倍に増やすから優先取引してなどと逆に交渉するなどの対策をとる。
このように、より採点官にイメージしやすい内容で論述することが重要である。
つまり、自己満足論文ではだめなのだ。
あなたのキャリアを知らない採点官に臨場感のある内容で論述しないと、表面的で具体性に乏しい問題文ふくらまし論文と評価されてしまう可能性があるのだ。
まとめ
今回は、論述試験において「具体的に論述する」ことの重要性についてまとめてみた。
最後に本日のまとめを行いたいと思う。
- 設問アはあなたの状況を採点官にイメージさせるための箇所
- 設問イやウはあなたの状況を踏まえてどのような課題に対して対策したのかを書く箇所
- 問題文の転写やふくらました論述は表面的で一般論になりやすいため控えるべき
- 問題文の趣旨に沿うために問題文や例を活用して具体的な論述内容にする
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