情報処理技術者試験の論述式試験にはお作法がある。
その理由はシンプルなもの。
それは、合否判定のために採点官に理解させ、納得させられるかどうかが重要だからだ。
この記事では、採点官に理解させ、納得させるために必要な内容をまとめてみたいと思う。
ただ、あくまで私がこれまで合格してきた論述試験の経験を基にという条件付きであることをご理解いただきたい。
あなたの論文は誰のために書くのかを意識する
前回は問題文に沿って具体的に2,800文字程度で論述すべきという話じゃったのぉ~
覚えてくれていて嬉しいです!
今回は、なぜそのような論述にすべきかを経験談として語ろうと思います!
まず、前回の記事を改めて読んで欲しい。
この記事では、以下2点が重要であるとお伝えした。
- 問題文の趣旨に従うこと
- あなたの考えや経験を具体的に2,800文字程度で表現すること
では、なぜこれが重要なのかをこの記事では紐解いていく。
まず、一番重要なことを述べる。
それは、「あなたの論文はあなたの経験や考え方を知らない第三者が採点する」ということだ。
少し想像してみて欲しい。
同じ会社で働く同僚や上司は、結論を先に述べることやだらだらとした説明を嫌うと思う。
これはこれで正しい。
ビジネスにおける重要なスキルの一つに端的に明瞭な内容で簡潔に説明することが求められるからだ。
でも論文試験は違う。
あなたの会社のこと、あなたの経験、あなたの考え、あなたの会社での評価などまったく知らない第三者があなたの論文を読む。
だから、唐突に論述展開してもあなたの優秀さや経験、営む専門事業などわからないのだ。
よって、背景の説明があり、どういう考えの下で行動をとり、その行動についてどのように評価したのかを客観的に論述する必要がある。
2時間の論述試験でこれを表現するには、2,800文字程度になってしまうというのが経験則である。
客観性を持たせるには根拠と数字が重要
採点官に伝わる文章を書かなければならないことは分かった。
ただ、伝わる文章とはどういうことじゃ?
採点官が妥当と評価するためには根拠と数字が重要です!
情報処理技術者試験の論述区分の論文を採点する採点官は、非常に優秀な方だと思う。
論述対象の試験区分に応じて専門性の高い方が採点官を務めていると考える。
このような方が合否を判断することをまず頭に叩き込もう。
すると、二つの重要な要素が登場する。
それが、「根拠」と「定量的な表現」である。
参考までに、ITストラテジスト試験の組込みシステムの問題を見てみよう。
設問アでは、新製品の概要・特徴と企画に至った経緯の2点が問われている。
設問イでは、分析手法の選定理由、分析方法、分析内容、立案した戦略の4点が問われている。
設問ウでは、市場調査の方法と分析内容の妥当性、戦略と市場参入の評価の2点が問われている。
さて、あなたならどのように論述するか。
正解はないが、合格に近づけるために必ず必要なことは第三者に伝わる内容にするということだ。
設問ア~ウまでの問われていることを要約するとこんな感じで書いていく必要がある。
1-1 新製品の概要と特徴
私は○社に所属するITストラテジスト。
今回、A社の既存製品○○システムに●●機能を追加した新製品を企画した。
新製品の概要は△△で特徴は□□である。
1-2 企画に至った経緯
A社の既存製品○○システムは売上が伸び悩んでいた。
○○システム全体の市場規模は200兆円、成長率は150%程度であった。
しかし、○○システムのうち、A社が主力としている分野の成長率は5%程度と頭打ち状態。
市場成長率と社会情勢を考慮すると、A社の主力製品は売上高をキープするどころか低下する
リスクすらあるため、今回の新製品を企画した。
2-1 分析方法の選定理由
私はPPM分析を選定した。
理由は新製品を市場投入することでその分野のシェアを拡大できるか見極めたいからだ。
2-2 分析方法
私は、以下2点を分析することとした。
・新機能を搭載したシステムの市場規模と成長率
・新機能を搭載したシステムを市場投入している先行企業有無の調査
2-3 分析内容
新機能を搭載したシステムの市場規模は90億円、成長率は300%と急成長中であった。
新機能を搭載したシステムの先行企業は複数存在しており、その中でもX社が国内シェア
No.1であった。なお、X社の年間売上高は3億円程度であったが、体制構築に課題があった。
PPM分析の結果、市場参入企業数が少ないが需要は高いため、シェア拡大が容易と考えた。
現時点では問題児でも3年以内に花形に移行できると判断した。
2-4 立案した戦略
A社の新機能を搭載したシステムの販売価格を13百万、販売数を100企業とした。
販売価格はX社のものを参考にするも、A社の原価を考慮したうえで設定した。
また販売数については、既存顧客1,000社の8%である80社と新規顧客に20社に導入する目標。
この目標で試算した売上高は13億円となる。
また、X社と業務提携を結び、ノウハウを得ることとX社の体制構築の課題解決を図る。
そして、A社とX社が双方でWin-Winの関係を築き、相乗効果を得ながら売上拡大を目指す。
X社との業務提携を断られた場合は、展示会の積極的な出展などで集客を行う。
3-1 市場調査の方法と分析内容の妥当性
市場調査の方法、分析内容共に妥当であったと評価する。
理由は、市場全体と今回企画しようとする新製品の市場規模と成長率を客観的に評価し、
企画を進めること自体が正しいのかを評価できたからだ。
また、X社の存在を知ることで販売価格設定や国内シェアなどを見極めることができたからだ。
3-2 戦略と市場参入の評価
戦略と市場参入は成功したと評価する。
X社との業務提携に成功し、高度な技術とノウハウを得て適切な販売価格で市場投入できた。
また、シェアも拡大することができたからだ。
かなり要点を絞っているため、論文骨子に毛が生えたような内容である。
見ていただくと分かる通り、骨子を作成すると1文ごとに「なんで?」って疑問が生まれる。
その「なんで?」の部分を具体例や定量的な数字を用いて論述内容を肉付けしていくのだ。
この繰り返しが採点官に臨場感と具体性・客観性を与え、合否の評価ができるようになる。
繰り返しになるが、論述内容は必ずと言っていいほどあなたの考えや行動に対する根拠が必要である。
また、その根拠を導き出した理由を客観的な数字や具体例を基に表現する必要がある。
その結果、採点官が「その状況ならそうだよね」と思わせることができれば合格なのである。
論述する試験区分の理想とする人物像になりきろう!
論文を書くうえで客観性が重要ということは分かった。
他に気を付けなければいけないことはないのかのぉ~
受験する試験区分の理想とする人物像になりきることが重要です!
情報処理技術者試験の論文は、その試験区分で理想とする人物像になりきる必要がある。
前述の通り、論文の骨子を考えてから具体的かつ客観性を持った論述をすることが重要だ。
ただ、その試験区分で理想とする人物像を常に意識しないと、いつの間にか違う試験区分の論述内容になってしまう。
例えば、プロジェクトマネージャ試験の論述をしなければならないのに、内容はシステムアーキテクトの内容を書いてしまうなどである。
この過ちは結構多いのではないかと思う。
私も論文試験対策中や本試験などで失敗した経験がある。
この落とし穴に引っ掛かりやすいのは、以下2点に合致した受験生だと思う。
- 受験する試験区分が日常業務と異なる
- 本試験の問題が日常業務に近くこれなら書けそうだなと思える問題を選択する
情報処理技術者試験は、自分のスキルアップのための事前準備として受験する方が多いと思う。
例えば、通常の業務はシステムアーキテクトだが、将来を見据えてプロジェクトマネージャ試験を受験するケースだ。
ITストラテジストやシステム監査は独立感が強いため、比較的このような過ちは犯さないと思われる。
しかし、プロジェクトマネージャ、システムアーキテクト、ITサービスマネージャは結構注意すべきだと思う。
なぜなら、問題文がどの試験区分の内容でも書けそうな内容で出題されることが多いからだ。
だから、練習の段階から常に受験する試験区分の人物像を意識して対策する必要がある。
練習でできないことは本番でもできないのだ。
ちなみに、私はこの失敗をよくして先生に何度も注意された経験があります、、、
問題文は論文のバリエーションを発散させない役割を果たす
具体的な論述ができれば合格なのであれば、なぜ問題文が必要になるのじゃ?
問題文という前提条件を付けないと採点官も正しく評価できないのではと考えます!
改めて、ITストラテジストの問題を見てみよう。
設問ア~ウの前に紙面の2/3ほどの問題文が存在する。
この問題文が、受験者の論文内容がバラエティーに富んだものにならないようにしているのだ。
例えば、問題文抜きにして以下2つだけ書いてあったらどうであるか?
問題:組込みシステムの製品企画戦略における市場分析について
設問:設問ア~設問ウの記述内容
これだと、自由に論述できてしまう。
自由に論述できるということは、様々な切り口で論述ができてしまう。
すると、市場調査対象製品が既存製品と新製品どちらでも記述でき、かつ分析方法も多岐にわたってしまう。
ITストラテジストにふさわしい受験生を評価するにも、同じ目線で評価することができない。
つまり、問題文は受験生が答案用紙に論述する内容をある程度縛るためのものであると考える。
問題文の趣旨に従う必要がある意味
ここまで読んでいただいたあなたならもうお気づきであろうと思う。
前回の記事でも書いた「問題文の趣旨に従う」ことの理由を。
改めて前回の記事を再掲する。
問題文に沿って論述しないと、受験者を公平に評価することができなくなる。
だから、この前提条件で論述してねという内容にしているのだ。
よって、問題文の趣旨に添わない場合は前提条件に従っていないとみなすよ。
つまり、公平に評価できないから評価を下げるからねというメッセージなんだと思う。
突き詰めると、論文試験の本質とは問題文の状況において、あなたの考えと経験を私(採点官)に分かるように書いてね。」ということではないかと考える。
まとめ
本日は論述式試験の論述方法について、体験談をもとに追加情報をまとめてみた。
最後に本日のまとめを行いたいと思う。
- 論文試験は採点官に読んでもらうことを前提に表現する
- 採点官はあなたの経験や所属企業の評価などは全く知らない第三者であることを認識する
- 採点官に合否判定するためには臨場感ある具体的かつ客観性をもった論述が必要
- 論述する際は常に受験する試験区分の人物像になりきる
- 問題文は論述するための前提条件
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