エンベデッドスペシャリスト試験の午後Ⅰ試験は難易度がかなり違う③

エンベデッドシステムスペシャリスト

令和2年度 秋期 午後Ⅰ試験から問1の共通問題が廃止されており、純粋に3問中2問を選択する他の高度系試験区分と同じ方式になった。

今回はこの年度の問1を紹介する。

この問題は全てではないものの解答を一意に特定するのが難しい問題のように感じた。

短時間の中で解答が一意に特定できないと時間を浪費し、結果的に焦りが生じ、解答の質が大幅に低下する

私はこの状況に陥った。

何が混乱させたかをしっかりと分析しつつ、必要としているあなたに届くようにまとめてみた。

問題の読み落としが混乱を招く原因

師匠
師匠

令和2年度 午後Ⅰ 問1はかなり苦戦したようじゃの?

superrunx
superrunx

はい。

解答時間55分、設問1ではまりあとはグダグダ状態に陥りました。

まず、問題文を紹介する。

出典:令和2年度 エンベデッドシステムスペシャリスト試験 午後Ⅰ試験 問1

日本円紙幣整理機という知っていても身近に存在しないものが題材となっている。

問題文の長さや小問の数も7問と平均的で一見共通問題程度の難易度のように感じさせる雰囲気がある。

この問題は、設問1と設問2がやたらと悩ませる問題だと感じている。

では、さっそく順番に行きたいと思う。

superrunx
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まずは、設問1から!

(1)はM2及びM3の制御に必要な情報は何かという問題である。

この問題に関係する箇所はこちら。

出典:令和2年度 エンベデッドシステムスペシャリスト試験 午後Ⅰ試験 問1

赤枠部分の後続で「反転機構1」と「反転機構2」が存在する。

ではこれらの機構ではどのようなことを実施しているのかを問題文で確認する。

出典:令和2年度 エンベデッドシステムスペシャリスト試験 午後Ⅰ試験 問1

図4を確認すると、「反転機構1」では横方向、「反転機構2」では縦方向に紙幣をひっくり返す機構であることが理解できる。

ここまででこれらの制御を行うために必要な情報のイメージが浮かび上がったと思うので、問題文を読んでみる。

すると、以下の箇所にヒントが現れる。

出典:令和2年度 エンベデッドシステムスペシャリスト試験 午後Ⅰ試験 問1

問題文の最初の段落に「金種を鑑別し、鑑別結果が指定金種であれば、紙幣の裏表と向きをそろえて・・・」という箇所が登場する。

先に解答を言うと「紙幣の裏表と向き」である。

ただ、私はかなり悩んで「指定金種」も解答として記述した。

1つ目のモヤモヤとして、なぜ「指定金種」の情報が不要なのかが不明確なのである。

問題文の冒頭に、「日本円紙幣の複数ある金種のバラ紙幣を投入口に入れ、操作部で指定した金種を束にするものが整理機である」という趣旨の内容が書かれている。

人間なら金種ごとに紙幣の裏表と向きの情報が暗黙的にわかると思うが、整理機も同様にわかるものではないはずだ。

だからこそ、指定金種を特定した上でその紙幣の裏表と向きの情報をM2およびM3に与えないと反転機構1と反転機構2が正しく紙幣をそろえられないと判断した。

自己採点した後に改めて問題文をじっくり読むと、問題の読み落としに気が付く。

出典:令和2年度 エンベデッドシステムスペシャリスト試験 午後Ⅰ試験 問1

表2の「紙幣鑑別ユニット」の機能概要2点目に、「金種、紙幣の裏表と向きを鑑別し、・・・」という記述がある。

つまり、M2の前段でM2に流れてくる紙幣が操作部で指定した金種のみということなのである。

そして、〔機構部の動作概要〕の④(赤枠部分)に「反転機構1及び2によって、紙幣の裏表、向きをそろえる。」という記述があることで、指定金種が不要と判断できる。

これが、IPAの解答例が「紙幣の裏表と向き」だけとしている理由が理解できた。

次は(2)である。

S6通過時に図5中の㋐の状態にそろえるためには、どの状態の紙幣パターンが反転機構1で反転させる対象かを解答する問題である。

まずは、図5を見てみよう。

出典:令和2年度 エンベデッドシステムスペシャリスト試験 午後Ⅰ試験 問1

S6通過時点で図5の赤枠部分の紙幣の向きになっている状態にしたいということである。

では、反転機構1はどういう動きだったかを改めてみてみよう。

出典:令和2年度 エンベデッドシステムスペシャリスト試験 午後Ⅰ試験 問1

反転機構1は横方向に紙幣を反転する。

よって、まず図5の㋓の状態の紙幣は反転機構1で反転する必要がある。

これでおしまいではない。

図5の㋒の状態の紙幣は反転機構2で縦方向に反転すれば㋐の状態になるが、問われているのは反転機構1の方のため解答としては対象外になる。

図5の㋑の状態を見てみよう。

この状態の紙幣は少し工夫しないといけない。

反転機構1で紙幣を横方向にいったん裏返しにする。

そして、反転機構2で縦方向に表返しにすることで㋐の状態になる。

よって、解答は「㋑、㋓」となる。

計算問題は落ち着いて解くことが一番の近道

(3)は、やらかした小問だ。

まず小問の内容を見てみよう。

出典:令和2年度 エンベデッドシステムスペシャリスト試験 午後Ⅰ試験 問1

この問題はかなり慎重に読まなければらななかった。

じっくり時間があれば全然難しくない問題だが、時間に追われていると本当に焦るものだ。

なにがひっかかるポイントかを順に説明する。

まず、小問の冒頭に「指定金種の紙幣だけ」と記載がある。

よって、M1で返却口に行く紙幣がなく、全てM2に流れていくということだ。

次に「1分後に100枚の束が・・・」との記載と「S1が1を出力する時間は38ミリ秒・・・」という記述がある。

ここで単位を合わせるために「秒」に換算しよう。

そして、最後に最大に厄介な条件が問題文に記載されている。

出典:令和2年度 エンベデッドシステムスペシャリスト試験 午後Ⅰ試験 問1

問題冊子の4ページの最下部にしれっと「S1通過直後の搬送路を流れる紙幣と紙幣との間隔は、紙幣1枚分・・・」という記述がある。

つまり、紙幣1,000枚分を処理するためには、紙幣と紙幣の間の1枚分の空白を考慮しなければならない。

よって、以下の計算式で解くことができる。

1枚当たりの処理時間
 38ミリ秒/枚 ÷ 1,000秒 × 2(紙幣間1枚分を考慮) = 0.076秒/枚

1,000枚に要する処理時間
 1,000枚 × 0.076秒 = 76秒

60秒当たりの処理枚数
 1,000枚 : x = 76秒 : 60秒
      76x = 60,000
      x =789.47…

よって、最大「7束」が解答となる。  

設問1で時間を大量消費した結果、エイヤーの解答が多くなってしまう。

superrunx
superrunx

設問2に移る時点で残り18分。

かなりマズいペースで焦りが絶頂期を迎える。

まずは時間が無くなって焦るとどうなったかのイメージを掴んでもらおう。

私の解答例

見ていただくと、設問2の(1)および(2)が共にボロボロなのがお分かりであろう。

では、順番に問題文の見落とし箇所を見つけながら解説してみたいと思う。

(1)は空欄a~eの穴埋め問題。

問題文から該当箇所を見つけると以下の表であることが分かる。

出典:令和2年度 エンベデッドシステムスペシャリスト試験 午後Ⅰ試験 問1

空欄aは、どこかから何かの通知を受けてサーバに管理番号の問い合わせを行っている。

管理番号の取得に関する記述が問題文にないかを探すと、表2の束ユニットに記載があった。

出典:令和2年度 エンベデッドシステムスペシャリスト試験 午後Ⅰ試験 問1

束ユニットが「管理番号の取得依頼を送信して、制御部経由で・・・」との記述がある。

表3に戻ると、束タスクの空欄eが束ユニットから何かを受信して、メインタスクに通知している。

前後するが、空欄eは上記より「管理番号の取得依頼」となる。

そして、それをメインタスクに通知するため、空欄aは「束タスク」となる。

次に、空欄b、c、dである。

これが少し難しかったと感じた。

まず、空欄bの直前に「紙詰まりの通知を受けると・・・」という記述があるため、紙詰まりに関係する穴埋め問題であることが分かる。

では、他の問題文にヒントがないか順番に見ていこう。

出典:令和2年度 エンベデッドシステムスペシャリスト試験 午後Ⅰ試験 問1

紙詰まりが起きた場合は、「直ちに動作を停止」することが記載されている。

では、何を停止するのかという話だが、ここに私は時間をさらに要してしまった。

例えば、反転機構1や反転機構2が紙幣を回転させたりするから、ここが紙詰まりを起こすなどと余計なことをいろいろと考えてしまったのだ。

情報処理技術者試験は、問題文以外に前提条件を付け加えてはいけない鉄則がある。

一般的にとか自分の経験でというものは一切入れてはいけないのだ。

それを踏まえて問題文を改めて読み直すとヒントが表3に隠れているのが見つかる。

出典:令和2年度 エンベデッドシステムスペシャリスト試験 午後Ⅰ試験 問1

開始ボタンを押下した際に動かしているものに「搬送路のモータと投入口のモータ」がある。

もちろん反転機構1や反転機構2も動くには動くが、紙幣タスクを見るとセンサで紙幣を検出した時だけ動かしているのである。

つまり、常時動かしているものを紙詰まりが起きた際に止めたいという趣旨の問題というわけだ。

改めて空欄b、c、dの部分を含めて文章を作ってみる。

すると、空欄bは「搬送路のモータ」、空欄cは「投入口のモータ」、空欄dは「停止して」となる。

次に(2)を見てみよう。

出典:令和2年度 エンベデッドシステムスペシャリスト試験 午後Ⅰ試験 問1

停止ボタンが押された際に、メインタスクが搬送路から紙幣がなくなったと判断する式を作る問題である。

では順番に見ていく。

まず、一番最初に必要となるのは投入された紙幣の数である。

これをどうやって調べるかであるが、問題文をぱっと見ても投入口に投入された紙幣をカウントしている箇所が見つからない。

なにかで必ず数えることができるものがあるはずという観点で問題文を見ると、表3に隠れている。

出典:令和2年度 エンベデッドシステムスペシャリスト試験 午後Ⅰ試験 問1

上記の赤枠①と②の部分を見て欲しい。

投入口の直後のセンサであるS1を紙幣が通過するたびにメインタスクに通知し、メインタスクで紙幣タスクを生成している。

つまり、整理機に投入された紙幣の数分だけ紙幣タスクが生成されるのだ。

これが、紙幣が投入された全量数となる。

よって、空欄fは「紙幣タスクの生成」となる。

空欄gとhがとっても難しい。

前述の通り、ここも私はいろいろと問題文にない前提条件を勝手に付け加えてしまったがゆえに混乱した

でも、落ち着いて考えると紙幣は指定金種の場合は束排出口、そうでない場合は返却口から出てくる。

この前提条件で表3を見ると、ヒントが2か所あることに気付く。

出典:令和2年度 エンベデッドシステムスペシャリスト試験 午後Ⅰ試験 問1

指定金種ではなかった場合、返却口に紙幣を返却するためにS7を通過する。

その際に紙幣タスクが「返却完了通知」をメインタスクに通知した後、自タスクを削除している。

また、指定金種であった場合、束ユニット直前のS6を紙幣が通過したタイミングで、紙幣タスクが「搬送完了通知」をメインタスクに通知した後、自タスクを削除している。

これらの「通知」の数の合計が紙幣タスクの生成数とイコールになれば搬送路から紙幣がなくなったと判断できるわけだ。

よって、空欄gは「返却完了通知」、空欄hは「搬送完了通知」が解答となる。

最後の設問が意外と簡単にしてくれているケースがある。

superrunx
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最後の設問3を見てみよう!

情報処理技術者試験の作問者も難易度調整のために簡単な問題を用意してくれているケースがある

それがこの問題の設問3ではないだろうか。

エンベデッドシステムスペシャリスト試験の午後Ⅰ試験の設問3は機能追加や仕様変更の話になっていることが多い

その中で、追加するタスクと変更するタスクの連携方法を考えたり、新たな不具合に対する改善を測ったりする趣旨の問題がよく出題される。

最後は(1)と(2)をいっぺんに見ていく。

出典:令和2年度 エンベデッドシステムスペシャリスト試験 午後Ⅰ試験 問1

表4からの出題である。

(1)はメインタスクの変更内容について、(2)は紙幣タスクの変更内容について問われている。

(1)は、日本円以外も扱えるようにする必要があることから、操作部で指定した通貨及び金種を紙幣鑑別ユニット連携しなければならなくなったが、それがどこにも記載がない。

機能変更概要を確認すると、以下の内容が記載されている。

出典:令和2年度 エンベデッドシステムスペシャリスト試験 午後Ⅰ試験 問1

すると、案の定6点目の箇条書き部分に記載がある。

これをそのまま転記したものが空欄iの解答となる。

最後の空欄jは仕様変更前の紙幣タスクでタイマタスクに通知している内容を確認する必要がある。

出典:令和2年度 エンベデッドシステムスペシャリスト試験 午後Ⅰ試験 問1

仕様変更前は日本円の紙幣のみを取り扱っていた。

正常処理されているか紙詰まりかの判断は実はここにかかっていた。

こちらも問題文を改めてじっくり読んでようやく気付いた点だが、タイマタスクの箇条書き2点目と3点目で判断している。

正常時はタイマタスクが時間計測を開始してから、一定時間が経過する前に紙幣タスクが処理を終わると時間計測の中止を通知してくれる。

逆にこれがない場合に紙詰まりと判断しているのだ。

これが、紙幣の幅がことなると計測時間も変わってくるということに気付けるかどうかである。

操作部で指定した通貨及び金種に合わせて計測時間を調整しなければならない。

解答を組み立てるために、仕様変更前の紙幣タスクのタイマタスクへの通知内容を確認すると、「紙幣検出をセンサタスクに依頼する場合は、該当するセンサが紙幣を検出するまでの時間よりも少しだけ長い時間を計測時間として・・・」と記載がある。

これをバラエティに富んだ紙幣にも対応するというのが空欄jの解答となる。

よって、空欄jは「紙幣検出をセンサタスクに依頼する場合は、指定された通貨及び金種に合わせた該当するセンサの計測時間」となる。

まとめ

本試験は緊張した中で限られた時間内に合格基準点を獲得しなければならない。

以下の点に注意して極力冷静になることを心掛けて欲しい。

  • 問題文に記載されていない条件を勝手に付け加えない
  • 小問に関係しそうな範囲で答えを一意にできない場合は問題文を俯瞰してみる
  • 計算問題は落ち着いて単位を合わせて冷静に取り組む
  • 問題文から抜き出して転記する小問があることを頭の片隅に置いておく
  • 問題文に記載の表現を極力まねして解答を組み立てる

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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