令和5年度 秋期 エンベデッドシステムスペシャリスト試験(以下、ES試験)から、午後Ⅱ試験が論述式に変更となる。
これまでITストラテジスト試験(以下、ST試験)の組込みシステムの午後Ⅱ過去問演習を続けてきたが、基礎知識が足りない。
そこで、ST試験の午後Ⅱ過去問題の問題文の読み込み、その中に登場する用語を整理してみる。
題材:令和4年度 春期 ITストラテジスト試験 午後Ⅱ 問3
まずは問題を見てみよう!
経営環境の急激な変化に伴う組込みシステムの成長戦略の意思決定に関する問題である。
ITストラテジストなら確かに知っていないといけない言葉がずらりと並ぶ。
しかし、組込みシステムエンジニアがITストラテジストと同等の知識レベルとは限らない。
私はエンタープライズ系のシステムを担当しているシステムエンジニアだが、同じように使わない用語が多々登場する。
令和元年度にITストラテジスト試験に合格しているが、日常では使用しない用語が多数であることもあり、かなり忘れてしまっている、、、
ということで、次から順番に整理していこうと思う。
デジタルトランスフォーメーション(DX)
いきなりDXが登場してきたぞ~
デジタルトランスフォーメーションは、簡単に言うと以下の3つを満たすものである。
- ITを活用する
- 楽して儲ける
- 体質を作る
何気なく検索した友村晋さんのYouToubeチャンネルがめちゃくちゃわかりやすかった。
私も社内研修や書籍などでいろいろと小難しい内容を読み聞きしたが、これが一番スッと頭に入った。
簡単に言うと、アナログ作業をITで自動化し、そこから得られたデジタルデータを活用して、新たな事業を量産する仕組みを構築することということである。
では、なぜいまDXが必要なのか。
これが、問題タイトルにある「経営環境の急激な変化」というキーワードに詰まっている。
経営環境の急激な変化とはどういうことか。
それは、顧客ニーズの変化が激しいということなのだ。
つまり、今までやってきたことがニーズに合わなくなることがどんどん起きやすいということだ。
現在のビジネスが来年には下火になり、近い将来なくなる可能性があるということだ。
つまり、組込みシステムにおいても同じことが言え、主力製品だと思っていたものがいつの間にか売れない製品になることが起こりえるのだ。
だから、この問題で問われていることはきっと以下の2点なんだと思う。
- 組込みシステムにおいてもDX推進による成長戦略の立案が求められる
- 成長戦略立案のためにデジタルデータを活用して事業を生み出していく能力が求められる
アンゾフの成長戦略モデル
第2段落はまさにアンゾフの成長戦略モデルのことを言っているよ!
赤枠の部分がアンゾフの成長戦略モデルを文章で説明した内容である。
図で表すと以下のような感じである。
市場浸透戦略
既存市場に既存製品を投入して、販売促進策を駆使してシェア拡大を狙う戦略。
新製品開発戦略
既存市場に新製品を投入する戦略。既存製品のバージョンアップもこの戦略に入る。
新市場開拓戦略
新たな市場に既存製品を売り込むことで、売上や利益拡大を図る戦略。
多角化戦略
新たな市場に新たな製品を投入する戦略。関連多角化と無関連多角化に細分される。
関連多角化は既存事業との関連性が高めて相乗効果を得る戦略。
無関連多角化は既存事業と関連性が低いが、経営リスク分散化を図る戦略。
この問題は多角化戦略による意思決定プロセスを求められている
改めて問題文を読むとよくできているなと感心する。
改めて問題文を読むと、以下のポイントで論述することを求めているのではないかと考える。
- 既存事業で得たデータを用いて新規市場に新製品を投入する多角化戦略を採用する
- 多角化戦略で新市場に投入しようとしている新製品の概要
- 投入しようとしている新製品を新市場に投入しようとした経緯(経営環境の変化)
- 多角化戦略以外が成長戦略につながらないことをアンゾフの成長戦略モデルで説明する
- 立案した戦略が外れた場合の経営リスクマネジメント
- 成長戦略、意思決定、経営リスクマネジメントの評価
もう少し具体的に私の考えをまとめる。
顧客ニーズの変化が激しい(経営環境の急激な変化)中、既存事業だけではシェア確保が難しく、その事業の存続すら継続できない可能性が高まってきている。事業が成り立っている現時点から、将来を見据えたDX推進による新規ビジネスを創出(新製品を新規市場に投入)が必要である。
そのために、既存事業で蓄積したデジタルデータや市場公開されているデータを活用し、既存製品を貫き通すのか、新たなビジネスを創出するのかをアンゾフの成長戦略モデルを用いて意思決定する。
既存製品が問題文の状況で今後衰退する(市場縮小やシェア縮小など)可能性を見抜き、経営リスクの分散を図るために多角化戦略(非関連多角化)で新規市場に新製品を投入する。
新製品を投入するためには、これまでの既存事業とは異なる分野に進出するため、自社で強みとなる保有技術と補填しなければいけない新規技術を明確にする。
新製品にもDX推進のためのデータ収集、活用を進め、関連する事業(関連多角化)を創出できる仕組みを構築する。
これが問題文の第2段落に登場する「成長戦略の継続的な見直し」の布石となる。
ただし、非関連多角化によって創出した新規ビジネスが必ずしも成功するわけではない。この経営リスクに対応するために、既存事業はそれはそれで残しておくなどのリスクヘッジが必要。
これらを総合的に考えた上で、既存事業だけでは将来的にこうなりそう、新製品投入によるリスクもこう言ったものがあるという意思決定に必要な情報を整理して経営層と合意していく。そして、この取組みを継続的に実施していく。
このようなことを問われているように感じた。
勉強で使用した書籍の紹介
勉強するのに非常に役に立った書籍を紹介するよ
この2冊で今回の記事を書き上げられるだけの知識が身についた。
2023年度版から午後Ⅱ対策として、論述試験の対策方法やサンプル論文が掲載されるようになった。
今回はこの書籍に掲載されている過去問題から令和4年度 春期 ITストラテジスト試験の午後Ⅱ問3をピックアップした。
そして、問題文を読み、分からない用語の抽出し、YouToubeでの学習につなげることができた。
言わずと知れたみよちゃん本。
この本で問題文の読み方を復習した。
改めて、情報処理技術者試験論述区分の午後Ⅱ試験問題文には無駄が一切ないことを理解すると共に、さりげなく読み流してしまいそうな重要な部分をしっかりとマークすることを思い出すことができた。
今回の問題文で言うと第2段落の「成長戦略の継続的な見直しが必要」という部分が「DX推進」と関連していることを理解しているか問われていると感じた。
まとめ
今回は、午後Ⅱ試験対策が上手くいかなくなってきたので、午後Ⅱ試験過去問題の問題文をしっかりと読み、そこからわからない用語を抽出して学習した。
そして、問題文が読めるようになり、問われていることの本質を理解できるようになることを目的に学習した。
最後に今回の内容をまとめてみたいと思う。
- 今回の題材は令和4年度 春期 ITストラテジスト試験 午後Ⅱ 問3
- デジタルトランスフォーメーション(DX)はIT活用、自動化、新規ビジネスの量産で完成
- アンゾフの成長戦略モデルを用いた意思決定方法の理解
- 問われていることは経営環境の急激な変化に対応するための継続的な成長戦略の立案
- 継続的な成長戦略立案のために多角化戦略で投入する新製品にもDXの要素を盛り込む
- 新製品で得たデータも活用して継続的に成長戦略を見直す仕組みを作る
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